視床下部、下垂体が原因で起こる卵巣機能不全は、「中枢性卵巣機能不全」とも呼ばれます。視床下部、下垂体、ともに脳の一部にあり、卵巣機能を司る、まさに「中枢」といえます。

この病態を理解するためには、視床下部―下垂体―卵巣の機能を理解しなければなりません。

視床下部は卵巣から分泌されるエストロゲン(E2;エストラジオール)の血中濃度を常にモニタリングし、エストロゲンが低下しているときにGn-RHというホルモンを分泌して下垂体を刺激します。下垂体はその刺激によりFSHと少量のLHを分泌し、卵巣を刺激し始めます。これが月経期から排卵前に起こる現象です。主にFSHの刺激により、卵巣には卵胞が発育し、卵胞の中には卵子が育ち、卵子を取り巻く顆粒膜細胞からE2が分泌されます。やがて卵胞が充分成熟し、E2がそれにともない高値に達すると(自然周期では200pg/ml)、再び視床下部が察知し、下垂体をさらに刺激、今度は下垂体からLHの分泌が起こります。これがLHサージです。
LHサージにより卵胞は排卵し、卵子が卵胞から卵管内に取り込まれることにより、その頃卵管内に達した精子と出会い、受精が起こり、やがて妊娠にいたるわけです。

卵胞は排卵後、内部に出血を来たし、黄体化します。黄体から黄体ホルモン=プロゲステロンが分泌され、高温期が作られ、これが排卵から2週間すると消褪するため月経が起こります。
月経期にはE2値が最低値になるため、再び視床下部が働き始め、Gn-RHを分泌して下垂体を刺激。。。
と、視床下部に起因し、下垂体を介した卵巣の働きにより毎月月経が起こる、妊娠の機会を迎える、という流れがお分かりでしょうか。

少し難しいですね。産婦人科医でもこの働きを充分理解できないくらい難しいのです。

これら「中枢」の異常により引き起こされる卵巣機能不全ですが、視床下部の機能が悪ければ下垂体を刺激できない、下垂体の機能が悪ければ視床下部からの刺激を卵巣に伝えられないため、無月経や月経不順、不正出血などの「症状」が起こるのです。

視床下部・下垂体の機能異常を疑うのは、下垂体から分泌されるLH、FSHが低値の場合。LH、FSHが正常でも視床下部の機能が異常である場合があります。大切なのは、中枢性卵巣機能不全が疑われた場合、その責任部位が視床下部であるか、下垂体であるかを見極めることです。

まず第一に原因と治療法が異なります。そして重症度が異なります。

次回はこの点に触れたいと思います。