新型コロナウィルス肺炎の、特に妊娠との関係についてまとめています。

4月1日、日本生殖医学会は、国際的な機関であるICMARTの声明文を受けて、生殖医療の延期を考慮するよう声明を出しました。

以下の情報にもあるように、現状では新型コロナウィルスが妊婦さんから胎児への感染を起こす、とか、赤ちゃんに異常を来す(催奇性)、と言った証拠はありません。

しかし、妊婦さんは重症化する可能性があること、また現状でCOVID-19に対する有効な治療薬はありませんが、注目されている「アビガン®」などは、妊婦さんは使えないため、妊婦さんに有効な治療薬が開発されるまで、または感染拡大の危険性がなくなるまで、妊娠を待つべきもの、としています。

当院の方針は以下のリンクをご覧下さい。

生殖医療(不妊治療)を受けている患者さんへ 〜新型コロナウィルス感染の影響を考慮して〜


2月16日の政府の第1回新型コロナウイルス感染症専門家会議の結果、相談や受診の目安が示されました。

すでに国内感染がみられることから、中国への渡航歴や接触歴の有無は問われません。

・風邪の症状、37.5℃以上の発熱が4日以上続く

・強いだるさや息苦しさがある

場合、帰国者・接触者相談センターに相談する。

また、重症化しやすいため、上記の症状が2日続いたら相談する目安として、

・高齢者

・基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患、腎障害)を持つ方

・免疫抑制剤や抗癌剤を用いている方

そして、

・妊婦さん

です。


診断方法として「PCR検査」が大きく取り上げられていますが、完全な検査ではなく、PCR検査でも偽陰性があります。つまり感染していても「していない」と判断されることがあります。

つまり、PCR検査を受けても安心にはつながりません。3月6日より、限られた医療機関でも検査を行えるようになっていますが、単に心配だから、と言う理由だけでは受診しないようにしてください。

いまだに、ほとんどの報告は、中国国内からのもので、実態がはっきりと、つかみきれていません。

現状ではどのような方に感染が多いかは、具体的ではありませんが、重症化、死亡例は高齢者、基礎疾患を持つ方、喫煙者が多い様ですが、日本国内でも若年者の感染者は少なくなく、海外では若年者の重症例も見られます。

今後は日本をはじめ、中国国外での感染者のデータが有用となると思われます。


妊婦さんや授乳している方、今現在妊娠を考えている方が、どう行動し、何に気をつけたら良いか、日本産婦人科感染症学会(3/17更新、第7版)、日本産婦人科医会(3/4更新、第5報)が発表されています。


中国から胎内感染を示唆する2つの報告(Lan D et al. 2020Zeng H et al. 2020)がありました。

まだ報告数が少なく、検査方法からも確実ではありませんが、注視していかなければならない情報です。

3/17の中国からの報告では、38人の感染妊婦で死亡例がない、SARS、MARSと異なる点を指摘(Schwartz DA. 2020)。

2/28の早産の報告(Wang X et al. 2020)と3/13の死産の報告(Liu Y et al. 2020)では、妊婦感染

早産は、妊娠30週で妊婦さんが感染し、赤ちゃんの状態が悪くなってきたため帝王切開されたものです。

また新たに13人の妊婦さんの報告で、9人の赤ちゃんは健康に産まれたものの、34週の妊婦さんは敗血症ショックから多臓器障害に陥り、子宮内胎児死亡となったようです。


2/12に発表された論文では、COVID-19に感染した9人の妊婦さんが報告され(Chen H et al. 2020)、同様の追報告もありました(Zuh H et al. 2020)

これらによると、報告数が少ないものの、妊婦さんの肺炎の重症化はほとんどありません。

これまでのほとんどの報告で、羊水や胎盤、出産した赤ちゃんへの感染はなく、現在のところ、胎内感染は否定的でした。また母乳からもウィルスは見つかっていません。

同様のコロナウィルスで過去に流行したSARSやMERSでも、胎児への子宮内感染は認められませんでした。

皆さんが最も心配される、ウィルスが直接関与する流産や早産の可能性は高くなく(上記の早産の報告は妊婦さんの重症化が原因です)、胎児奇形も報告されていません。


では、妊婦さんがかかってしまった場合、どうしたらいいのでしょうか。

まず、かかりつけの分娩施設に速やかに相談をしましょう。

同時に上記の帰国者・接触者相談センターに連絡をしてください。

感染が明らかな場合、予定していた分娩施設での出産ではなく、専門施設に転院せざるを得ないかも知れません。あらかじめ主治医の先生と、その場合の分娩施設を確認しておきましょう。


妊婦さん、授乳婦さんにも一般的な予防方法が推奨されています。

現状では手洗い、うがい、またアルコール消毒が推奨され、マスクによる予防効果ははっきりと分かっていません。

電車のつり革や、公衆トイレのドアノブなど、不特定多数の方が触れるものに触れた後は、きちんと手洗い、出来ればアルコール消毒をしましょう。

感染を防ぐ目的に、安定している妊婦さんの妊婦健診を1〜2週、遅らせることも考えてください。担当の先生に相談してください。

クルーズ船内での感染を見ても分かるように、感染者と近距離、または長時間接触しないことが一番なので、不特定多数の人が集まる、特に屋内、乗り物は注意しなければなりません。政府からも不要不急の集まりを避けるよう呼びかけられています。

しかし、明らかな感染経路が分からない報告も増えてきており、今後は感染予防を行いつつも、感冒症状、呼吸器症状がみられる場合は早めに医療機関を受診し、重症化を予防する事を重視する段階に入ってきています。

今後も新しい情報に注意していきましょう。妊娠初期

初出:令和2年2月13日
補筆修正:令和2年2月14日、16日、18日、29日、3月4日、6日、13日、18日、19日、25日、28日、4月1日、2日、7日