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体外受精などの生殖補助医療で使われる黄体ホルモン腟錠のトラブル

体外受精などの生殖補助医療では、胚移植の前から黄体ホルモンを腟錠で用います。

内服や注射剤と異なる使用法のため、マイナートラブルがみられることもあります。

カスが出て困る、かゆい

腟錠に限らず、内服薬や外用剤も、その中の薬効成分(この場合黄体ホルモン)はほんのわずかで、薬剤のほとんどが、基材とよばれる成分です。

基材は薬効成分を効率よく治療部位に届けるため、なくてはなりません。

黄体ホルモン腟錠の中でも、「ワンクリノン腟用ゲル®︎」は、ゼリー状の基材を使用しており、腟内に効率よく広がり、黄体ホルモンを吸収しやすくしていますが、一方でこのゼリーがカスのように腟内にたまり、不快感であったり、痒みを感じることもあります。

このような症状があっても、身体や治療成績への悪影響はありませんが、不快であれば来院時に腟内を洗浄することができます。遠慮なく相談してください。

また、現在ワンクリノンの出荷制限により、「ウトロゲスタン腟用カプセル®︎」を処方していますが、ウトロゲスタンはワンクリノンとは異なり、少し油っぽいお薬で、またカプセルが溶けづらく、中身が吸収されたカプセルが腟から出てくることがありますが、心配しないでください。

お薬が出てしまった時は?

入れたはずのゲルが出てしまった。薬を追加すべき?

明確な規定はないのですが、ワンクリノンのインタビューフォームによると、血液中のワンクリノンに含まれるプロゲステロンの濃度は、初めて使った日には12時間後、連日使っている場合は6時間後に、遅くともピークに達します。

よって、これ以降に出てしまったのであれば、プロゲステロンは十分吸収されていると考えて良いと思いますが、反対にこれ以前であれば、念の為、もう1本使っておいた方が良いでしょう。

一方でウトロゲスタンの場合は、1カプセル追加して使いますが、次の使用時間が近い場合には追加しなくても良い、とされています。


当院で行なっている保険診療での生殖補助医療の実際の方法を、動画で解説しています。

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和元年12月18日
補筆修正:令和2年3月10日、12月17日
補筆修正:令和4年8月26日、12月2日
補筆修正:令和5年4月23日