最新のお知らせ

ピルは太る? 将来妊娠しにくくなる? など 〜低用量ピル(OC/LEP)にまつわる誤解〜

低用量ピル(OC/LEP)は、避妊だけではなく、月経痛PMS(月経前症候群)、月経不順や子宮内膜症の治療と、副効用(副作用とは異なる、主作用以外の良い作用)を目的とした服用が大変多くなっています。

よくいただく質問の中に「でもピルを飲むと太るでしょ?」と服用をためらう場合があります。


ピルを飲むと本当に太るのでしょうか。いろいろなご質問、誤解を解説していきます。


ピルを飲むと太る?

日本産科婦人科学会の「OC・LEPガイドライン(2015)」によると、「(OCの)服用と体重増加との間に因果関係はない」と記載されています。

その根拠として、にきびの治療を目的とした14歳以上のプラセボとの比較で6ヶ月間体重増加がない論文と、2年間若年の長距離ランナーを対象としたOCを服用しない場合との比較(体重、体脂肪ともに増加しない)が紹介されています。

実際に当院で服用している方たちの中でも、体重が増えて困る、と言う方はあまり多くはありません。

ピルで体重が増える原因は主に、むくみ、と食欲増進です。

OCに含まれているホルモンは、エストロゲンと黄体ホルモンです。

むくみはOCに含まれるエストロゲンと黄体ホルモンによる水分貯留作用なので、OCの休薬期間に改善します。

また黄体ホルモンは食欲を増すことがあります。生理の前に食欲が増すのと同じ作用です。

むくみも食欲も、強く出るようであればOCの種類を変えてみます。

OCにはたくさんの種類がありますが、含まれるエストロゲンの量や黄体ホルモンの種類が異なるため、製剤を変えてみると解消されることがあります。

OCの他にもエストロゲンや黄体ホルモンを用いるカウフマン療法でも、同様の症状が出ることがありますので、お困りの場合には治療法の検討を行います。

将来妊娠しにくくなる?

これも良くある誤解ですが、避妊効果がある薬を、一定期間服用するため、単純に将来も妊娠しにくくなる、と考えられているようです。

ピルの避妊効果は、内服中に排卵を抑制したり、子宮内膜を薄くさせたりすることによります。

排卵抑制や子宮内膜の状態は、ピルの服用を止めると次の周期から見られなくなり、つまり、ピルを止めれば、すぐに元通りになる、と言うことです。

反対に、妊娠したい方はこちらも参考にしてください

飲み忘れるとかえって妊娠しやすくなる?

妊娠に関して、もう一つの誤解ですが、どうしてこんな情報が独り歩きするのか分かりませんが、「飲み忘れると避妊効果が弱くなる」との説明が、「飲み忘れるとかえって妊娠しやすくなる」と誤解されているのかもしれません。

上にも書いた排卵抑制効果は、きちんと服用できている場合に発揮されるため、飲み忘れてしまった場合には注意が必要です。しかし飲み忘れても排卵抑制や子宮内膜は薄いまま、の可能性はありますが、かえって妊娠しやすくなる、と言うことはありません。

肌荒れひどくなる?

可能性が全くないわけではなく、ピルに含まれている黄体ホルモンの作用によって男性ホルモン用の作用が現れることがあります。

一方で、排卵を抑制し、ご自身の卵巣から分泌される黄体ホルモンを減らすことにより、男性ホルモン作用を減らし、肌荒れ、ニキビの改善効果がみられる方が多いです。

避妊薬なのにコンドームを使わなければならないの?

これは、どうしてか、お分かりですよね?

詳しくはこちらの記事も参考にしてください

低用量ピルや黄体ホルモン(POP)を紹介した動画です

 

文責 桜井明弘(院長、日本産科婦人科学会専門医)

初出:令和元年12月11日
補筆修正:令和2年3月25日、7月9日、8月8日、12月25日
補筆修正:令和3年2月25日、10月5日、12月18日
補筆修正:令和4年11月19日